◆屈筋群と伸筋群の相反抑制について

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1. 相反抑制とは?

相反抑制(Reciprocal Inhibition)は、

身体が効率的かつ安全に動作を行うための神経反射メカニズムの一つです。

 

この仕組みにより、ある筋群が収縮して動きを生じる際、

対となる筋群が自動的に弛緩することで、スムーズな運動が可能になります。

 

例えば、腕を曲げる際には、

上腕二頭筋(屈筋)が収縮する一方で、

上腕三頭筋(伸筋)が弛緩します。

この連携がなければ、スムーズな動きが妨げられ、

効率的な運動ができません。

 

2. 屈筋群と伸筋群の分類

 

屈筋群(Flexor Muscles):関節を曲げる動作を行う筋群

前鋸筋
腸腰筋
肩甲下筋
橈側手根屈筋
内側ハムストリングス
後脛骨筋

 

伸筋群(Extensor Muscles):関節を伸ばす動作を行う筋群

菱形筋
上腕三頭筋
尺側手根屈筋
腹横筋
内転筋
腓骨筋

これらの筋肉は、それぞれペアとなって特定の関節や体の動きにおいて

相反抑制を担っています。

 

3. 相反抑制の仕組み

動作を行う際、中枢神経系(脊髄や脳)は以下のような指令を送ります。

主動筋(動作を行う筋肉、例:屈筋群)に収縮命令が出される。
同時に、拮抗筋(動作を妨げる可能性のある筋肉、例:伸筋群)には

弛緩命令が送られる。

この連携により、関節や体全体が効率よく動く。

たとえば、腸腰筋(屈筋群)が収縮して股関節を屈曲させるとき、

内転筋や腓骨筋(伸筋群)は弛緩し、

動作がスムーズに行われます。

 

4. 相反抑制と機能不全

相反抑制がうまく機能しない場合、

次のような問題が発生する可能性があります:。

主動筋と拮抗筋が同時に収縮することで、

動きがぎこちなくなる(協調運動障害)。

不要な筋緊張が蓄積し、筋肉や関節に痛みや疲労が生じる。
長期間の機能不全があると、過剰に使用される筋肉が硬直し、

対になる筋肉が弱化する「筋バランスの崩れ」が起きる。

 

たとえば、肩甲下筋(屈筋)が過度に緊張し続けると、

菱形筋(伸筋)が弱化し、

肩甲骨周辺の不安定性や肩こり、運動制限が起こることがあります。

 

5. 相反抑制を利用したトレーニングアプローチ

① ストレッチと収縮を組み合わせたトレーニング
主動筋を収縮させることで

拮抗筋が弛緩しやすくなる相反抑制の性質を活用します。

例1: ハムストリングスのストレッチ
太ももの前側(大腿四頭筋)を収縮させながら行うと、

ハムストリングス(内側ハムストリングスを含む)がより効果的に伸ばされます。

例2: 腸腰筋のストレッチ
大臀筋(拮抗筋)を収縮させながら腸腰筋を伸ばすことで、

柔軟性を高めつつ筋バランスを整えます。

 

② ダイナミックストレッチやPNFストレッチ
屈筋と伸筋の協調性を高めるため、

動的なストレッチやPNF(固有受容性神経筋促通法)を取り入れると、

筋肉同士の連携が改善します。

 

6. まとめ

相反抑制は、日常動作やスポーツ動作において

重要な役割を果たす神経反射の仕組みです。

屈筋群と伸筋群のバランスが整うことで、

スムーズで効率的な動きが可能になります。

 

トレーニングやリハビリテーションでは、

相反抑制の仕組みを意識しながら筋肉の柔軟性や強度を高めることで、

身体のバランスを向上させ、怪我の予防やパフォーマンス向上につながります。

 

 

 

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